細胞について

話題

細胞という言葉を聞いたことがあると思います。細胞を解析したり、細胞を何かに活用することもバイオテクノロジーであり、当社が皆様をサポートできる分野の1つです。ここでは、細胞への理解に触れたいと思います。

<細胞説>

細胞は、17世紀に、イギリスのフックがコルクの顕微鏡観察で発見したとされています。単細胞の細菌の発見は、オランダのレーウェンフックが最初と言われています。しかし、記録が確かではありませんが、それより先に細菌が発見されていたと言う人もいるようです(当時は、細菌ではなく、小さな虫と考えられていたようです)。

19世紀後半になると、今では当たり前の2つの概念が定着してきます。1つは、植物や動物などの生き物は細胞から成るという細胞説です(最近は、細胞外基質の重要性が認識されていますが)。もう1つは、細胞分裂や出芽という現象で、細胞は細胞からできる、という考え方です。

<細胞の発生>

細胞がどのように地球上に発生したかは定かではありません。42億年前の化石に生物の存在が確認されているそうです。海底の熱水噴出孔で生じたという説が有力です。その当時は海には大量の二酸化炭素が溶け込んでおり、酸性だったと考えられています。そのため、アルカリ性の熱水噴出孔で生命が誕生したと言う人もいます。

熱水噴出孔から出る水の由来は、地球の内部に沈み込んだ水です。海の水はそのまま沈み込むのではなく、玄武岩に染み込んで含水玄武岩となり、プレートの動きで地球の内部に沈み込みます。その途中で、一部はマントルの熱で蒸発して火山から地表に戻ります。一方、高い圧力を受けて沸点が上昇し蒸発せずに地球内部に留められた水は、さらに沈み込みます。それは、溶解鉄でできた地球の外核に達するとも言われています。そうして地球の内部のミネラルなどを取り込んだ水が、海底の熱水噴出孔から湧き出てきます。

熱水噴出孔では、噴出する水に含まれる鉱物が固まったチムニーが形成されます。煙突や小さな火山のような形です。そこには、小さな穴がたくさんできています。その小さな穴では、物質は半循環状態になります。その穴の中で偶然起こった有機反応の産物は、そこに留められつつ、次の反応に必要な材料が新しく流入する状態です。何かのタイミングで、両親媒性の脂肪酸ができたと考えられています。両親媒性の脂肪酸は自己集合し、その中にチムニー内にできていた核酸やタンパク質を閉じ込め、チムニーから離れる準備が整ったと考えられています。

細胞が自立するには、継続的なエネルギーの獲得が必要です。熱水噴出孔では、熱だけではなく、チムニー内部から外向きの電流が発生しているようです。さらに、この電気エネルギーでの化学反応で有機物が合成されるようです。それにより、上述のとおり原始的な細胞ができてきたと想像できます。しかし、それらが熱水噴出孔のエネルギーから独立したのち、どのように生命活動を維持したかは、不明な点が残っています。

<細胞の構造>

現在の生物の細胞は複雑な構造を持ち、様々な機能を備えています。原始の細胞から現在に至るまで、どのようなプロセスで細胞が発展してきたかは定かではありません。しかし、細胞についての知見の充実は、知的好奇心を満たそうという欲求に応えるだけでなく、産業的にも意義があります。生物生産や、再生医療を支える細胞工学などです。

細胞の構造は、だいたいは、次のような説明がされていると思います。

・細胞膜(脂質二重膜)で覆われている。

・真核生物では核があり、その中に遺伝情報を保持するDNAがある

・核膜と繋がっている小胞体やそれらとは独立したゴルジ体がある

・元々は共生細菌だと考えられているミトコンドリアがある

・オートファジーなどの分解系がある

・細胞内外の物質輸送がある

・リボソームや中心体がある

・細胞骨格で細胞の形の維持や細胞内の物質輸送が行われている

・植物細胞では細胞壁や液胞がある(液胞は酵母にもある)

これらの根拠のほとんどは透過型電子顕微鏡観察です。すなわち、電子密度の違いでみえてきた構造物の情報です。そして、これらを中心に細胞の研究が進められてきました。しかし、実際には、もっと多くの構造物が細胞内に存在していると予想されています。以前から、タンパク質やRNAから成るvaultの存在が提唱されていますが、機能がはっきりしていません。液液相分離(liquid-liquid phase separation)という2つの液体が分離する現象が細胞でも起こっており、何かの目的で特定のタンパク質などを集合させているのではないかという説があります。最近では、リンを貯蔵しておく細胞内小器官の存在を示唆する論文が発表されました。

まだまだ、細胞について、わかっていないことが多くあります。新しい技術や視点は、細胞の世界に発展をもたらします。異分野との連携で革新的な技術が創出されることも珍しくありません。それらはビジネスチャンスでもあります。みなさんのアイデアや技術が、細胞の世界に新しい展開をもたらすかもしれません。ここでは、細胞の一般的なことを書きましたが、動植物の細胞は分化して、それぞれが特徴を持ちつつ集団で体を形成しています。そこから学べることも多くあります。たまには、細胞について、考えを巡らせてみるのはいかがですか。

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